大地
10年前、ニューヨーク。マンハッタンのスタジオで、ウィルリーと「旅に出よう」という曲をセッションした時。
同じく10年前。虹の岬祭という九州のネイティブな野外フェスのステージでライブしたあの日。
2011年の春。神戸のあるイベントで、沼澤尚と演奏した流れ歌。
ついこの前、福岡の美しいビーチで台風のバックスウェルをとらえ、友だちと二人きり波乗りした夕暮れ。
そして、五回目の押さえきれない感動と興奮の波は、思いがけず大地からやってきたのだった。
自然栽培で収穫した里芋がそれだ。
大丈夫かなと、夏のあいだずっと気がかりだった。
作付けした時期は遅かったし、肥料ももちろん与えていない。
半分はすでに猪にやられてしまっていた。
ただ、朝な夕な、ひたすら気をかけていた。
秋になり、恐る恐る掘り返してみれば驚きだ。どれもびっしりと実っているじゃないか。
よくやったよ、頑張ったね。夢中でその根を引き抜いた。
表に見えている茎や葉からは想像できないほど、里芋たちは深く広く根をはり、命いっぱいにその生を謳歌していたのだ。
すごいね、みんな、ありがとう。
なりふり構わずほとんど口に出していた。
でかくて気持ちのいい波は、めったに来ないからよく覚えている。そうあの感じだ。
五回目の大きなうねりは、僕の足元にあるこの大地から沸き上がってきた。
音楽、サーフィン、そして自然栽培の畑。
3つのフィールドが、これからの僕の旅の舞台となってゆくだろう。