ストーブ
先日、この秋になって初めて薪ストーブに火を入れた。
まだ大気も薪も乾ききっていないから、それほど勢い良く燃え付かなかったが、それでも秋の肌寒さを和らげるには充分で、いつしか僕はTシャツ一枚でせっせと薪をくべていた。
キッチンの隅っこに居座るようになって、まだ一年にも満たない漆黒のストーブだが、もうずいぶん長いことそこにいるような貫禄すら醸し出している。
冬の相棒はこれからおよそ五ヶ月の間、時々の休憩を挟みながらも、家中の誰より働き者となる。
彼の朝は僕より少しだけ遅く目覚め、夜は僕より少しだけ遅く眠りに就くことになる。
それから、この冬こそたくさんの薪を集めたい。
霜が降りる頃には蚊もいなくなるだろうから、また山々に倒木を拾いに行かなければ。
あとは廃材をもらい受けたり、ストーブ仲間に分けてもらったりと。
静かな炎の暖かさは、温泉のそれにも劣らない大自然の恵。
炎を見つめているだけで、ただこうして生きていられることへの感謝の念がわいてくる。
トムウェイツのクロージングタイムを流し、スルメを焼いて焼酎や日本酒をあおれば、完全なオヤジが出来上がる。
この黒き相棒のおかげで、僕はこんなにも冬が好きになってしまった。