落日

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陽が傾き、ポツポツとヘッドライトに明かりがともり始める。

ジャズギタリストの小沼ようすけと、彼の生まれ故郷である秋田へ向かう途中の海岸線。

僕らは湘南から関越道を通り抜け、日本海に出て北上していた。

これまでにも海に沈む夕陽を何度か見送ったことがあるが、今度のそれはとびきりだった。

その下弦が水平線に触れたとたん、オレンジ色の丸い球体は上から下へ濃くなる鮮やかなグラデーションを見せはじめたのだ。
それからゆっくりと少しずつ海に浸かり、最後は一点の小さな光の粒となって、明日の彼方に消えていった。

海から離れ、また少し走る。
余韻のような赤みを帯びた空がだんだんと夜空の紺色と溶け合う頃、フロントガラスの向こうには、五月に至ってもなお雪を身に纏った鳥海山が悠然と姿を現した。

僕とようすけとの目的地はその麓の小さな町だったが、それはやはり僕らの新しい旅の出発点でもあった。

翌日の酒蔵でのライブで、僕らはこれまで以上にさらにうち溶け合ったように感じた。

彼のミュージシャンシップはやはり素晴らしかった。ステージが終わる頃には、二人してご機嫌でハッピーな音を奏でる旅に出ることにためらいは無くなっていた。

たくさん話をした。ギターの話を、音楽の話を。音楽に宿るスピリットの話を。そしてサーフィンと旅について。

「気持ちいい音楽を二人で作ってみよう。」
どちらからとなくそう約束して僕らは別れた。


さらに翌日、僕は一人で秋田市内に居残り、その夜誰もいない静かなイタリアンレストランで夕食をとった。

店内には絶妙に押さえられた心地よい音量でジャズが流れている。

店主の勧める料理をひとつと赤ワインを注文して、この旅の終わりと次なる旅の始まりに乾杯した。

あまりにも美しかったあの夕陽は心に残ったまま、いつまでも沈むことはなかった。