catch the wave

東田トモヒロのPHOTO DIARY

ステイゴールド


ツアーは、駆け抜けるがごとく、あっさりとそのゴールを切った。

沼澤尚は翌日から別のライブに旅立ち、僕はレヨナとその一行を南阿蘇へ連れて行った。

温泉に浸し、カフェにて食事とお茶を与え、南阿蘇の静かな水源に連れ去る。
客人が来熊した時のルーティンだ。


終わりの始まりはいつも阿蘇。

明日からの日常を、僕は僕なりに少しずつ変えて行こうと思うし、それは水の流れのようにごく自然なもので、変えてゆくと言うより変わらざるをえず、僕ですらその流れに逆らうことが出来ない。


音楽と、ライブと、自分が生きる「場」を、ただひたすら平和なものにして、ひとり土に還ってゆくことが、僕の務めだということを知っている。




この旅の途中で、山尾三省に出逢った。
もうすでに他界された彼だか、その書き残した本、「狭い道」というやつに。


三省は屋久島に暮らした人だったから、以前から度々話しには聞いていた。

しかし何故か今になって、しかもこの旅のさなか、その一冊の本は、ある友人の手から思いがけず僕にもたらされたのだった。

これ以上のタイミングはなかった。

本というより、それはまるで予言のようなメッセージ。

これほど誰かに勇気づけられたことは無かったかもしれない。

とても不思議な気持ちで、繰り返し繰り返し文字を追っていた。

奇跡のような出逢い。鉄の偶然性。


思えばこれまで、目の前のことに無我夢中で、ずっと地図のない旅を繰り返して来たような気がする。

いや、やっぱりこれからも同じだろうな。

地図にない道をゆく
僕ら旅人

ステイゴールド。


photo by t-higashida

九州

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佐賀と福岡の二ヶ所も、タカさんとふたり。

今日は福岡福津のランドシップだ。

ここでライブはどれぐらいぶりかな。

たぶん2年ぶりぐらい。


生憎の雨だが、それでもやっぱり気持ちのよい場所には変わりない。


ピアノもあるから、チャンスがあれば、流れ歌をピアノでやってみようかと考えている。

チャンスがあれば。



ところで今日が平日の火曜日だとは知らなかった。


カレンダーから自由であり、時計から自由であり、年齢から自由でありたい。

そしてできれば国境から自由であり、政府から自由であり、性別から自由であり、自分から自由である音楽になりたい。

まるでこの目の前にある海のようにだ。
photo by t-higashida

みちのく

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みちのくは、レヨナはおらず、沼澤尚と二人旅だ。

移動前に、山形の山間にある蕎麦やをたずねた。


街中では到底味わえない手打ちの腰の強さに、しばし舌鼓を打つ。

蕗の薹やたらのめの天婦羅なども、ありがたくご馳走になった。



さて、二人きりの演奏はまたいい。
自由度も増し、さまざまな発見に胸が踊る。


三人のツアーではできない、ハレルヤや流れ歌、ラストソング、ロックンロールなども試せる。


タカさんのアプローチ、そしてスローバラードにおいてのグルーヴは、おそらく日本ではずば抜けてるだろう。

イントロを合わせた瞬間から、別世界が広がる。

ふたりして白いキャンバスに画を描くのだ。

グルーヴマスターの異名をとり、踊れる踊らすドラマーだと人々は持て囃すが、僕の見解は少し違う。

沼澤尚はバラードがいい。泣ける歌がよく似合う、泣ける泣かせるドラマーだ。

流れ歌を彼のドラムで歌えば、誰よりも深く感動してるのは、歌ってる本人だから世話はない。


今夜の登米はどんなライブになるかな。

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森林公園

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昼下がり。

横浜は根岸にある広々とした公園で、久しぶりに逢う友人と語り合った。


雨上がりのピュアな風に吹かれていると、この星はなんて居心地がいいんだろうと思う。


遠くまで見渡せる丘の上のベンチに腰掛けて、尽きることなく交わす言葉は、過去、現在、未来を自由に行き来した。


まるで昔買った小説をいくつか引っ張り出して、パラパラめくってるような気分。




誰もただひとつの答えなど持ち合わせていないが、心の中に自分だけの居場所があって。
その窓を開けたり閉めたりしながら、今日みたいな風にさらしては、なんとかその部屋がため息だらけにならないようにしている。

僕もその繰り返しだ。



いい天気だったから。

僕ら二人は、ただもうそれだけで満たされていた。

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アースデー東京

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気温も低く、小雨のぱらつく代々木公園。

それにも関わらず、アースデー東京は多くの人々で賑わっていた。


野外フェスなどでよく顔を合わせる連中の、相も変わらない笑顔に触れてほっとしたのか、ライブが終わってみれば、急に体の力が抜けたような気がした。


アースデー東京の野外ステージとはやけに相性がよく、これまで幾度かギターを片手にそこに立ったが、いいライブだった記憶しかない。



たぶんフリーコンサート独特の雰囲気が、そうさせてくれるのだろう。


音楽はもともとフリーであったはずだし、フリーであるべきだ。


生業にしている僕が言うと、そこには矛盾がどっかり横たわるわけだが、時間をかけて少しずつ、この矛盾を消化していけたら。


そんなことをぼんやりと考えた。
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路面電車

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城下町富山。

街には路面電車が走る。

どことなく熊本と似た雰囲気があるからなのか、僕にとっては旅先でもくつろげる数少ない場所のひとつだ。


二ヶ月前に来たときは、大雪だったこの街にも、すっかり春が腰を降ろしたらしく、桜は風と戯れながら、その花びらを誇らしげに辺り一面に振る舞っていた。

熊本のそれより乗客の少ない路面電車に乗り込んで、一人でライブ会場へ向かった。


土地勘などありはしないが、ホテルのロビーで見せてもらった地図の記憶を頼りに。


北陸の旅が終われば、このツアーはまたひとつの区切りを迎える。


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誕生会

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富山に着いての夕食会は、最後にちょっとした仕掛けを用意した。


そっと明かりを落として、ささやかだがタカさんの誕生日を、一緒に祝わせてもらったのだ。


照れ臭そうに笑ってた。



この世界に生まれ落ちて、いつの間にか巡り逢い、今こうして一緒に旅をしているという奇跡を、僕は心の中で、彼の誕生日と同じように祝い、感謝していた。


はっぴーばーすでいタカさん。

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ふたたび

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ふたたび旅は走り出した。
東京でレヨナと沼澤さんと再会し、神奈川から静岡へと流れてゆく。


かねよ食堂ではDJトミーが、ターンテーブルの後ろに根を張り、静かに体を揺らしながら待っていた。


外は猛烈な春の嵐。

かねよのトタンを剥ぎ取らんばかりの雨風だったが、それでもたくさんの人たちが、僕らの音楽の波を求めて、逢いに来てくれた。


月と太陽。

歌いながら込み上げて来るもの。

旅が誘う、ゆっくりと未来へ続く道。

帰り際の夜空には、それでも吹き飛ばされなかった星がいくつか輝いていた。


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タナカマン

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熊本に、タナカマンことタナカムネトヨが現れた。

彼が僕のために削ってくれたサーフボードは、これで2本目となる。

7’2シングルフィン。ノーズライダー。

デッキには、徳島で藍染を仕事としている、やはりサーファーのマッカくんが心を込めて染めた布が、藍色のグラデーションで封じ込められてる。

ワックスを塗るのが惜しいので、気が済むまでしばらく飾っておくことにした。




タナカマンはビッグウェーバーである前に、心優しき父親だ。

夜は少しの酒を酌み交わしながら、これからの人生について語り合った。


今頃彼は天草の海と戯れていることだろう。

ありがとうタナカムネトヨ。

またどこかの海で逢える日を楽しみにしているよ。

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ワイン

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ツアーは関西から四国、そして中国地方へ。


写真は徳島のライブのあと、差し入れていただいたビオワイン。

コルクを抜き、みんなと乾杯した。


決してはかりに掛けることのできないライブが続いている。


この旅の向こうには、どんな風景が待っているのだろう。

そして僕は何を想うのだろうか。

移動中の車の窓から外を眺めながら、そんなことをふと考えていた。
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